2009年12月7日月曜日

「ザッポス」と「ザ・リッツカールトン」の対比(その3)


「ザッポス」のサービスに対する価値基準の違いは、「ザッポス」に転職してきた社員をも驚かせます。
「『ザッポスが他社と違うところ……。そうね、いろいろあるけど、中でも一番驚いたのは、処理時間を測らないこと』 処理時間というのは、オペレーターがコール一件あたりに費やす通話時間と、その後のデータ・エントリーなどに費やす後処理時間を足したもので、普通のコンタクトセンターでは、オペレーターの生産性を測る一般的な指標として用いられている」
「ザッポスではこの数値を指標としていない。問題の解決にたどり着き、顧客を満足させるためには、たとえ何時間でも費やすことがよしとされているのだ」
「何をもって指標にしているかというと、『顧客を満足させるために、“普通”を超越するサービスを提供できたか否か』だという」
「基本的に、社内チームによる評価と、顧客による評価、の二通りです」(P40,41)
通常、オペレーターのコール一件あたりの処理時間は、オペレーターの生産性を測る一般的な指標です。
ザッポスでは、この処理時間を評価の指標にしていません。だからといって、指標をもっていないのではなく。まったく逆です。
独自の価値基準による、ザッポス固有の指標を創出しています。
著者は、ザッポスを「測って、測って、測りまくる」「その外見からは予想もつかないほど、指標徹底型(メトリックス・インセンティブ)な会社なのだ」(P103)とその本質を指摘しています。
違った指標をもつことが重要であることを、わかり易くするために、メジャーリーグの事例を見てみましょう。
2007年レッドソックスはMLBの頂点、ワールド・シリーズを制覇しました。松坂大輔の活躍はもとよりですが、岡島秀樹の貢献も大きなものがありました。
松坂のメジャー行きは、野球ファンを超えて、話題にもなり、注目を集めました。一方、岡島のレッドソックスとの契約は、それほど華々しいニュースにはなりませんでした。当初、アメリカのメディアは、「松坂の話相手」と評し、岡島の評価は、決して高いものではありませんでした。
しかし、後日、NHKの取材に応じて、レッドソックスは、岡島をどのような指標で、評価し、契約したかを明らかにしました。
レッドソックスは、岡島の投球データーの奪三振/与四球(K/BB)の指標に注目したといいます。即ち、四球一つについて、三振をいくつ取れるかという指標です。よいピッチャーの指標は2以上だとされています。フォアボール一つ出すうちに、二つ以上三振が獲れるということです。
岡島投手の巨人時代の最終年(2005年)の防御率、4.75、K/BB、2.9
2006年日本ハムに移籍になり、防御率、2.14、K/BB、4.5の好成績を残し、日本ハムの優勝および日本一に貢献しました。
レッドソックス一年目(2007年)防御率、2.2、K/BB、3.7、期待に違わない好成績で、ワールド・シリーズ制覇に貢献しました。
岡島のK/BBの高い実績を評価したレッドソックスの評価基準の勝利とも言えそうです。

1 件のコメント:

  1. こんにちは。石塚です。
    企業の人材評価基準が今までと大きく変わって、作業というよりもむしろ「人への思いやり」や「会社へのオーナーシップ」ということが重要になってきています。それをザッポスではコア・バリューの実践、そしてそれが最終的に成果につながっているか、という二つのポイントが重視されているのだと思います。企業文化の構築が企業力につながっている良い例だと思います。

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